しょうもないや

しょうもなくない諸々に関するしょうもない覚書

ぼくの叫びを聞いてくれ

  12月の頭のことになりますが、宝塚歌劇団雪組公演「ファントム」を観に行きました。望海風斗さん、真彩希帆さん、雪組さん、本当に素晴らしい公演を見せて下さりありがとうございました…。同じ時代に生まれることが出来てよかった…。朝晩とも夜行バスでの移動となり老体にはこたえましたが、そんなことはどうだってよくなる程の素晴らしさでしたし、遠征してでもあくまにたましいを売ってでも何度でも生で観たい聴きたいと思うそんな公演でした。チケットが手に入るかどうかだけが本当に不安でしたが、イープラスさん、この度は本当にありがとうございました。これからも末永くよろしくお願い致しますね。

  公演の諸々の衝撃により、毎回のことですが、記憶を失っている部分が多々見受けられます。順不同です。また、思い出した部分があれば随時加筆していきます。よろしくお願い致します。

 

 

【書き手】

  ひかりふる路で亡霊になり、見事にころがりおちたのぞみさんのファン。宝塚のファントムを観るのははじめて。あまりに楽しみと緊張がすぎて初日舞台映像ロングを一度しか見ずに臨むこととなったし、見た一度に関しては衝撃で記憶を失ったので、前述の通り宝塚のファントムを観るのははじめてである。(劇団四季オペラ座の怪人と、ジェラルド・バトラーさん主演の映画オペラ座の怪人は何度か見たことがある。)

 

 

 

 

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  のぞみさん、出だしのお歌からまた一層わけがわからないくらいにお歌がお上手になっておられていて、なんというか、この方には果てがないのかとすら思えて震えました。高みに登りつづけられるおすがたにまた尊敬の年を抱いてしまった。どんな場面でものぞみさんのエリックさんの抱いている色々な感情たちが、音楽と歌声に乗って、ぼくはこう思っているんだよってまっすぐに言ってくるみたいにびりびりと伝わってきて、そのたびにぼろぼろと泣いてしまいました。めちゃくちゃ泣いた…。買っててよかったファントムタオル…。(とても目元にやさしいふかふかさでしたのでおすすめです。)

 

  ワァ〜映画みたいだな〜と映画気分で見ていたきれいな映像たちの後にあらわれたのぞみさんの、ぼくの叫びを…の一声目でファントムの世界にぐんと引き込まれた感覚がありました。のぞみさんすごい…。

 

  これまでに観たことがあったのがALWさんのオペラ座の怪人だったので驚いただけかもしれないんですが、のぞみさんのエリックさんがすごくさみしい子供のようなエリックさんだったので驚きと愛おしさを感じました……………。どこまでもピュアで、それゆえの危うさもあって、感情表現がはっきりしていて、満たされない孤独感があって…さみしい子供でした…………………。カルロッタさんに対して「ぼくのオペラ座だ!」と言うところとか、オペラ座に現れて華麗に舞い踊りオペラ座をかき回していた場面でちょくちょくふふん!ってお顔をされていたのとか、クリスティーヌさんが周りから認められた時に自慢げなお顔をされていたのとか、キャリエールさんとのやりとりで自分勝手な態度を見せることも少なくはなかったところとか、泣きくずれる姿とか、愛するひとを好きな場所に連れてきてはしゃぐところとか…とにかく幼い子供のようでした…。幼くて危うくて愛おしい…。

 

  赤いお衣装でおめかしして、自分のだいすきな場所である森にだいすきなひとを招待してはしゃいじゃうエリックさん(森の妖精さんかな?)の幸福感や無邪気さと、クリスティーヌさんに拒絶された直後に森のような見せかけをしていたぬのがはらりと落ちて、周りの風景が一変して、クリスティーヌさんとの夢のような時間はすべてまぼろしだったのだ手に入るわけがなかったのだということが明らかになってしまった瞬間の絶望との落差で胃を痛めました…。

 

  トート様もそう(完全なる流れ弾)なんですけど、相手からしたら突然ヌッと現れて熱烈に想いを伝えてヌゥン…と去っていくの、冷静に考えると結構こわいなと思いました。しかしエリックさんが言った、ぼくの名はきかないで…の切実さがどうしようもなく愛おしくて、そんな恐怖もすっと消え去りました。なんだろうあの儚げで愛おしいいきものは…まもりたい……。しかし突然ヌッと以下略はこわいな…。

 

  制作発表会の映像が公開された時にも思ったんですけど、セーヌ川で〜とブローニュの森で〜のところののぞみさんときいちゃんのハーモニーが好きすぎます。芸術…。そりゃのぞみさんときいちゃんの御二方のハーモニーを聞いたら契約待った無しになりますわよね(?)。オペラ座との契約が成立した後、まずは恩師に菓子折りを持っていってお礼を言うべき、とあやなちゃんたちが仰っていたというツイートを見かけていたので、クリスティーヌさんが契約の後すぐにフィリップさんとおでかけに行ってしまったのを見た時に架空の菓子折りに感情移入をしてかなしくなってしまいました(誰?)。るんるんの凪様と、同じくるんるんで凪様のお話をあんまり聞いていないきいちゃんとのハッピーなナンバーもきらきらしていて素敵でした。凪様のひかりの美しさと安心感ときらきらさと幸せにしてくれそう感は無敵ですね。彼らの姿があまりにも幸福感に満ちていたので、渡せなかった花束を手に1人立ち尽くすエリックさんの寂しさや、唯一のひかりである愛する人を奪われてしまったという気持ちがものすごく際立っていました…。かわいそう…。ようやく見つけることが出来た天使の歌声だし、自分がレッスンもしたし、クリスティーヌさんのためにお衣装も頑張って用意させ/したのにね…。このエリックさんを救うことが出来るひとはクリスティーヌさんしか居ないんだ、ということを強く感じました。

 

   you are musicのサビに入る前に、音がぐっと上がるところのエリックさんの歌声がオーケストラみたいに壮大だった…。おふたりでお美しいハーモニーを奏でながら共に歩いていくのがすごくすてきだった…。あまりに神々しくて、しかしやさしくて、幸福に満ちていて、うっかりわたしは天国に来てしまったのかとすら思いました。音楽でふたりはひとつになることが出来るし、共に生きていくことも出来るんだって思えた…。あの瞬間、確かにそう思えたんだよ…。あの瞬間が永遠に続けばいいと思った………。

 

   トップコンビの御二方がファントムのどの楽曲もあまりにも上手に高らかにそして感情たっぷりに歌い上げていらっしゃったので、ファントムの楽曲がむずかしい譜面やメロディなんだってことをすっかりわすれていました。組子さん皆のコーラスとかソロを聴いて、ファントムの楽曲はむずかしいってことを思い出したりするなどしました。素人の感想ですが凱旋門などの時よりもコーラスとか組全体の歌がすごく上手になっているように感じました。それでもやっぱり御二方には次元の異なる安定感と豊かさとちからがあった…。改めて御二方の歌唱力のものすごさを感じました…。出会ってくれてありがとう………。(ウルトラ失礼な感想を12月の時点ではかすかに抱いてしまうなどしていましたが、1月や千秋楽の時点では組全体がもうものすごく上手だった気がしましたし、雪組さんみんなすごいな…と思って感動してしまいました…。成長がすごい…努力の結晶……。)

 

  今回は上手の一番端の席だったためにほんの数m前が花道だったので、暗闇の中はけていくジェンヌさんとか舞台の中央に向かわれるジェンヌさんのお背中とか花道で歌い踊る若手の方々とかを拝見することが出来たんですけど、凪様が登場される時に間近の斜め後ろから凪様のご尊顔を拝見することが出来てしまい、そのあまりの美貌にくらくらしてしまいましたね…。ありがたかった…。フィナーレの途中で暗闇の中花道をげんきにはけていくのぞみさんの影とかも追いかけてしまった…かわいい…。

 

   いや、あの、あんな、あんなに優しくて慈愛に満ちた歌声とすがたで、あなたのまことのすがたを見せてと微笑まれるなんかしたら、誰だって見せてしまうでしょう…。自分のいちばん醜くて、ひとにふれられたくなくて、苦しくてしんどくてやわらかい部分を見せてしまっても、彼女なら、もしかしたら受け入れてくれるかもしれないという希望を抱いてしまうでしょう…。それほどの愛と包容力と優しさに満ちた「まことの愛」だった……。それだけ優しくしたわりに結局拒絶をしてしまったクリスティーヌさんが悪い、と言いたいわけではないです。彼女だって、彼の母が彼に与えたような愛で以って彼の苦しみを受け止めようと、受け止めてあげたいと思って、ああいう歌いぶりをして懇願をしたわけなんだから…。何もエリックさんを苦しめようとしてあんなにも優しく歌い掛けたわけではないんだから…。ただ、彼女の愛は母親が子供に抱くようなそれではなかったから、彼の顔の傷もそれによる過去たちも彼のすべてまでもを受け止めてあげることも叶わなくて、受け止めてあげると微笑みかけたすがたが慈愛に満ちていた分、何よりも残酷なことになってしまったわけで…。いや、でもあまりにもあの語りかけるような優しい歌声からの拒絶が残酷すぎて…苦しかったです…。その後ののぞみさんの泣き叫ぶ姿も、ひりひりするくらい、痛いぐらい辛かった………。

 

   一幕の終わりの方で、クリスティーヌはぼくだけのものだ、とふいにギラついた目を見せたエリックさんを見て、だ…だめだよ…また純粋な思いを強く抱きすぎているがゆえに破滅してしまうのぞみさんのやつだよ…だめだよ………とはらはらするなどしてしまいました。ひとの話も聞いてくれ……。主にさきちゃんの話を……。

 

   二幕の頭かどこかで、のぞみさんが幸せだったときのドンジュアンちゃんみたいな真っ白なお洋服を着て踊られている時に、切ない表情をしてまるでだれかに助けを求めるみたいに両手をぐっと前に差し出す振りがあったんですけど、そのさびしい子供のような瞳でオペラ越しにまっすぐ見つめられる勘違いをしてぼろぼろと泣きました…。あんなにきれいでさびしい瞳がある…?

 

   でも純粋さゆえの破滅の陰が見えるのぞみさんの表情と、ダークな心持ちをされているときののぞみさんの表情は、どうしてあんなに美しくて魅力的なんだろう…………。ひかりふるのときも狂っていく時のマクシムが一番つらかったけど一番表情がどストライクに好みだったので、そういった場面があるたびに感情の板挟みでぺしゃんこになってしまった…………。

 

  貴方のお顔を見せていただきたいの、という旨のことばを告げられたときに、エリックさんの表情がゆっくりとでも確かにはっきりと変わるところの表現が好きだと思いました。その後に畳み掛けるように早口でそれだけはやめてくれというようなことを口走るところも、余裕の無さと拒絶の気持ちがすごく伝わってきてよかったです。逆にエリックさんの顔をはじめて見た後に、笑顔がゆっくりと崩れていく表現もすごくよくて、すごく胸が痛かったです…。

 

   舞咲さんのカルロッタさん、むちゃくちゃよかったな…。theハマり役だった…。おうたもお上手だしくせを強く出すのも上手だし、いやみ感をもりもり盛るのもお上手だしで最高だった………。さきちゃんのパパも良かった…落ち着きと安心感のあるひとでエリックさん思いで、でも息子に対してこころの距離を感じていたり臆病な部分もあるのがよくわかったりもして…よかった…。歌声も話し声もすごくやさしくて、でも自分は一度彼を見捨ててしまったのだ、という後ろめたさのようなものを感じる瞬間もあってよかったです。ちいさなのぞみさんとすらりとしたさきちゃんの身長差も父と息子という関係性にすごくいきていた…。

 

   エリックさん、クリスティーヌさんの腕の中で最期を迎えたことも、その最期の時にお顔の傷跡に口づけをしてくれたこともとても嬉しくて幸せだっただろうな……。唯一のひかりのような人が、母のような愛でもって自分のことを受け入れてくれる時が自分に訪れるなんて思いもしていなかっただろうし…。彼にとって、愛する人に受け止めてもらえたあの瞬間が一番幸せな瞬間だったのだろうか…。エリックさんに生きて幸せなときを過ごしてほしいという願いを抱いてしまった部外者のわたしは複雑な思いも抱いてしまいましたね…。

 

   のぞみさんのエリックさん、確かに幼くて孤独でさびしい男の子なんですけど、さびしくてぐずぐずしているだけではなくて、例えば天使の歌声を見つけ出すんだ!とか君をぼくのものだけにしてみせる!とか、暗闇や苦しみの中でもそういった強いパワーや生命力を抱いているひとなんだなと感じました。すごく純粋で脆くてよわよわしいところとかとてもパワーに溢れているところとか、相反するようなところがあるのが魅力だなと感じました。

 

  キリスト教徒でもなければ実家の浄土真宗に対する信仰もぺらぺらにうすい人間なんですけど、アヴェ・マリアを聴いた時にはどこか非日常的で、物悲しいような救われたいような気持ちになりました。なぜなんですかね。メサイアくんの楽曲を聴いた時にもこういったなんとも言えない気持ちになりました。メロディの効果なのか歌われた方々の気持ちの入りようがすばらしかったのか…。不思議な体験だと思いました…。

 

  きぃちゃん、本当に天使の歌声だった……。街で楽譜を売っているときからうつくしい声をしていたけれど、エリックさんのレッスンを受けた後は、本当にオペラ座プリマドンナにふさわしい天使のような歌声だった……。きぃちゃんがまことの愛を歌うたびにメソメソしてしまった……。のぞみさんもそうだけどうたがうまい、という次元をとうに超えてしまったような気さえした…。彼女たちが歌い出すと意識とこころのすべてをその歌声に傾けて聞き入ってしまうし、彼女たちの歌声に乗っている感情にふれてびりびりと痛いくらいにその感情を感じられる体験をしてしまう…。本当にすごい……。

 

  3000000回くらい言われていそうだけれどわたしは初見だったので言いますが、デュエダンの最後でのぞみさんときいちゃんが抱き合って、それから離れた後にのぞみさんがもう一度抱き締めるのを躊躇うような素振りを見せたときに、きいちゃんの方からのぞみさんをぎゅって抱きしめてあげるのと、それを受けてのぞみさんがおずおずととても優しく抱きしめ返すのを見てめちゃくちゃに泣いてしまいました…。クリスティーヌさんとエリックさんがそこにいた……。本当によかったね……。

 

   凪様のフィナーレのソロのときのヘアスタイルやお衣装やお姿がとにかくイケメンの権化だったし、おんなのこたちを引き連れてうたう凪様の安心感がものすごかった。親の顔より見た凪様…。

 

   これまで3時間弱ずっと隠されてひみつにされ続けてきたのぞみさんのひかり輝く美貌がフィナーレでついに解禁されたために、心臓と記憶にダイレクトアタックを受けて秒でライフがゼロになりました。セクシーで涼しげな流し目とキュートすぎるひかりのウインクをオペラ越しに受ける勘違いをまた複数回してまた泣いた……。恋………。

 

  とうとう仮面のものたちにかこまれるのぞみさんを見るとむねがざわざわしてしまう体質になってしまった…。ドン・ジュアンちゃん…マクシム……。

 

  改めてジェンヌさんのファンサービス力ってすごいなって思いました。わたしは今回12列目91番(上手の一番端)のお席だったので、今回はウインクをしてもらう勘違いとかは起こり得ないだろうなと思っていたんですけど、前述の通りフィナーレでも複数回勘違いを起こしたのでもう恋でしかないです。客席の一番端のにんげんにも気配りと目線をくださる…ファンサのプロ……。

 

   真っ赤なよそゆきらしきお洋服を着て少しそわそわウキウキしているエリックさんがこれからクリスティーヌさんに拒絶されてしまうのかと思うといたたまれなくて気を紛らわせたくて、あと上手側でのぞみさんの背中側を見るかたちになっていたのもあって、のぞみさんのおしりとかを見てきもちを落ち着かせていました…(?)おしりもかわいい…。完全に余談なんですが、タンゴクラブのガートボニートさんがソロで踊られるときにジャケットが翻ってのぞみさんのおしりがチラチラ見えるところをいつもドキドキしながら見ていました…。魅惑のライン…。

 

   Where in the world、すごく悲壮感に満ちていて苦しくなる楽曲でもありつつ、しかし最後に高らかに歌い上げられるところなんかはとても力強くて生命力に満ち溢れていて、エリックさんを表しているような楽曲だなと思いました。つらくて悲しくて決してひかりに満ちた人生を送ってきたとは言えないけれど、それでも自分の生きる希望を絶対に探し出してみせる、天使の歌声を見つけ出してみせるという強い気持ちや明るさがあって、その二面性がまた魅力だなと感じました。絶対にもう一度なまで聴きたい……。

 

 

✳︎

 

  音楽や舞台に1ミリでも興味のある全人類に、本当の本当に本当に生で観て欲しいと思う、そんな奇跡みたいな公演でした…。のぞみさん、きいちゃん、雪組さん、本当にありがとうございました…。おなじ時代に生きていてよかった………。

   2/10の日曜日に千秋楽のライブビューイングもあるので是非観てください。全人類のみなさま、よろしくお願い致します。詳細は以下のサイトを見てください。今からでも間に合います!!何卒、よろしくお願い致します…!!!!!!!!!!!!!!!

 

liveviewing.jp